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スコッチ業界の常識を覆したインナースティーブ技術。なぜ販売停止に?

スコッチ業界の常識を覆したインナースティーブ技術。なぜ販売停止に?

スコッチウイスキー業界を驚かせた熟成方法、インナースティーブ技術。

伝統的なスコッチの熟成手法に真っ向から挑み、業界の常識を覆した技術でしたが、協会によって販売が差し止められてしまいました。

 

なぜスコッチの世界では、インナースティーブ技術が認められなかったのでしょうか。

この記事では、新たな技術で熟成したウイスキーが、販売停止となった背景に迫ります。

 

 

【目次】

1.スコッチ業界の常識を覆したインナースティーブとは

2.販売を差し止められた初代スパイスツリー

3.メーカーズマーク46はインナースティーブで作られている

4.ジャパニーズウイスキーではインナースティーブ技術が禁止されていない

5.酒ハックもインナースティーブの応用でお酒を美味しく熟成できる

 

 

 

1.スコッチ業界の常識を覆したインナースティーブとは

インナースティーブとはウイスキーの製法の1つで、原酒に個性を与えるために大胆な方法で後熟させる特別な製造工程のことです。

 

ウイスキーは通常、大麦やライ麦、トウモロコシといった穀物を原料として発酵させ、蒸留した後、木樽で数年間熟成させます。

この熟成期間は、少なくとも3年以上が一般的な基準です。

 

熟成に使われる木樽は内側を焦がしてあり、これがウイスキーに琥珀色と豊かな風味をもたらします。

インナースティーブ技術は、この伝統的な熟成過程をさらに発展させたものなのです。

具体的には、熟成された原酒が入った樽にフレンチオーク製の「インナースティーブ」と呼ばれる板を樽に沈め、追加で数ヶ月間熟成させます。

これによって、ウイスキーにさらなる豊かな香りと深い味わいが加わり、我々はオリジナルのボトルとは異なる、新たな世界観を楽しむことができるのです。

 

 

 

2.販売を差し止められた初代スパイスツリー

インナースティーブ技術が原因で、販売を差し止められてしまったウイスキーがあります。

それが、2005年に発売された、初代「スパイスツリー」です。

 

イギリスのコンパスボックス社が、ワインの製造では一般的に行われている「樽の中に数枚のオーク材を沈めることで樽の香りを強める」という、まさにインナースティーブ技術を応用した手法で熟成させた、チャレンジングなウイスキーでした。

 

ところが発売後まもなく、スパイスツリーはスコッチウイスキー協会(SWA)から発売禁止を受けてしまいます。

その理由は、インナースティーブ技術を使った製造工程が「樽の中に入れられるのは原酒のみ」という、スコッチの定義から外れることを問題視されたからでした。

 

コンパスボックス社は、既成概念にとらわれない挑戦的なウイスキーを造ることで有名なボトラーズで、初代スパイスツリーもそんなコンセプトで作られた1本。

渾身の1本を否定されてしまった同社は、この処分を不服として協会に公開質問状を送るなどしましたが、決定が覆ることはありませんでした。

現在においても、インナースティーブ技術で作られたボトルはスコッチウイスキーと名乗れません。

 

その後、コンパスボックス社は諦めずに改良を重ね、天板をフレンチオークに変えた樽で原酒を二次熟成して香りを高めた、2代目スパイスツリーを2009年にリリース。

そのユニークな味わいは唯一無二の存在として、世界中のウイスキーファンに愛され続けています。

 

 

 

3.メーカーズマーク46はインナースティーブで作られている

手作業で施された赤い封蝋が有名なウイスキー、メーカーズマーク。

アメリカのケンタッキー州で作られており、ストレートはもちろん、ロックやハイボールでも美味しく飲めるバーボンです。

 

メーカーズマークにはスタンダードのほか「メーカーズマーク46」というボトルがあります。(写真は通常のメーカーズマークです)

こちらが、樽で6年以上熟成された原酒に、焦がしたフレンチオーク板を10枚入れてさらなる熟成を促すという、インナースティーブ技術で作られているのです。

 

スタンダードのメーカーズマークの味わいは、原料に使われている冬小麦が由来のクリーミーでまろやかな舌触りと、ふんわりとした甘みが特徴。

一方、インナースティーブ技術で作られたメーカーズマーク46は、フレンチオーク由来のバニラやメープルといった香りが加わります。

メーカーズマークはもともと膨大な手間をかけて作られるウイスキーですが、さらに手間をかけることによって、スタンダードより重厚で奥行きのある味わいが出来上がるのです。

 

なお、ボトル名の「46」は、インナースティーブ技術で使う板をオーダーする際、その焦がし具合を指定する番号に由来します。

 

 

 

 

4.ジャパニーズウイスキーではインナースティーブ技術が禁止されていない

我が国のウイスキー、つまり「ジャパニーズウイスキー」では、インナースティーブ技術は禁止されておらず、また表示義務もありません。

 

ジャパニーズウイスキーの定義が制定されたのは2021年で、つい最近のこと。

日本洋酒酒造組合によって制定されており、「発酵や蒸留といった工程を日本国内で行い、700リットル以下の樽に入れて3年以上熟成したもの」と定義しています。

瓶詰めについても国内で行い、その際のアルコール度数も40%以上でなければなりません。

 

この規定の中で注目すべき点は、インナースティーブ技術に関する言及がないことです。

つまり、この技術を用いたウイスキーも、上記の基準を満たしていれば「ジャパニーズウイスキー」として認められます。

 

したがって、どこかのメーカーがインナースティーブ技術を用いてウイスキーを作ったとしても、そのボトルは「ジャパニーズウイスキー」を名乗れるのです。

表示義務もないため、メーカーはこの技術を使ったと特に公表する必要はありません。

 

 

 

5.酒ハックもインナースティーブの応用でお酒を美味しく熟成できる

いつものお酒を専用ボトルに入れて半日待つだけで、風味豊かな熟成酒ができる「#酒ハック」。

クラウドファンディングで注目を集めた画期的なこの商品は、実はインナースティーブ技術を応用しています。

 

酒ハックで熟成に使用する銘木は、北海道産のジャパニーズオークや天竜スギ・ヒノキなど、すべて質の高い国産の木材を採用。

専用ボトルは透明で、熟成が進み徐々に変化していくお酒の様子を目で楽しめます。

 

樽で長期熟成されたお酒は豊かな香りや色を楽しめますが、原酒の量には限りがある上に良質な木材が枯渇しているため、どうしても高価になってしまうのが欠点です。

 

一方で、酒ハックを使えば、短期間でリーズナブルに美味しいお酒を楽しめます。

またウイスキーだけでなく、焼酎や泡盛などいろんなお酒を熟成可能。

初めての方には、手軽に始められる「基本セット」も用意しており、大切な人へのプレゼントにも最適です。

この酒ハックで、一段と豊かな味わいに熟成された、あなただけのお酒を楽しんでください!

 

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